中村憲剛のイクメン対談 第2回 大塚いちお氏
VOL.3「怒る時は、自分の感情のリトマス紙を持つ」

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――近年増えている虐待に関しては、どう受け取っていますか?

大塚:今日の質問の中で、それが一番難しい。まず、絶対あってはいけないことだと思っています。でも、日常の中で色々なことがある。それが、家でイライラしているとか、悪気がなくても家族に当たってしまう時も、出てきちゃいますよね。一方で、子どもが何か悪いことをしたら、怒らなければいけない。その時に考えるのは、自分の感情のはけ口として子どもを使わない、ということ。そういうリトマス紙みたいな基準を、どこかで必ず持つようにしています。こういう時には、こうした方がいいと思うことをちゃんと言う。それなら、大声出して怒ってもいいのかなと思います。最終的には、受け取り方とか本人同士の関係性によりますけどね。

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中村:叱り方というか、怒り方というか。どうすれば、虐待が減るのかは、結構難しいところがある。今回、いちおさんと話した言葉に引っ掛かって、手が止まる人もいるだろうし、その心情を理解してくれる人もいるかもしれない。いちおさんの作ったキャラクターが、お母さんの子育てを助けているケースもあると思いますよ。

大塚:震災後にNHKの番組が見たいという要望が東北からあって、いち早く子ども番組が再開されたんです。その放送を見て、僕のTwitterに「ありがとう」ってメッセージが来た。僕は放送の権利を持っているわけでもないですが、自分の創りだしたものが、そういう形で喜んでもらえるんだと実感したことがありました。
虐待防止までいかなくても、僕が作ったもので一瞬だけでもハッピーな気分になってくれた。それは僕一人の力でなく、内容を考えてくれる脚本家とか番組スタッフとか、作ってくれるプロデューサーとかディレクターとか、みんなの力が結集して生まれたもの。それはすごく幸せだなと思います。

中村:そう思います!僕も被災地には年に一回クラブで行きますが、一緒にサッカーしたりして、その力を感じることがあります。やっぱり笑顔のパワーはすごい。楽しい気持ちに一瞬なるだけでも、僕らのやっていることに価値があるのではないかと思えますよね。

――大塚さんは、今後の夢や今の仕事を未来の子どもたちにどう伝えたいという想いがありますか?

大塚:僕がやっているイラストレーターやアートディレクターの仕事は、スポーツ選手と違って引退がない。でも、ある日突然世の中からいらないと言われて、仕事が無くなるかもしれない。急に辞めることだってできる。でも僕は、これをすごく幸せな仕事だと思っていますし、やりがいも感じている。一生自分が死ぬまで何かを作り続けたら、それが何かの一つの証になるんじゃないかなと思っています。
イラストレーターって「楽しそうだけど生活できるの?」とか言われたりしますが、「僕は一生作っていて楽しかったんだよ」って言い続けられたら、いいのかなと。21世紀に残るような、すごいことをやりたいという想いもあります。でも、それよりもこの仕事を一生続けていけたら、そしてそれをたくさんの人に見せられたら幸せだなと、漠然と思います。

中村:是非!今、いちおさんの作品を見ている子どもが日本中にたくさんいるわけですから、すごいですよね。子どもたちの記憶に残るというのは、自分が思っている以上にすごいことだと思います。

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大塚:毎週いっぱいグッズを作っているんですけど、あんまり街で見ないんですよね(苦笑)。

中村:それだけみんな買ってるんですよ。超人気ですから。やっぱり、人々の共通の話題になるのはすごいです。

大塚:いやいや。等々力に行けば、みんな(背番号)14、中村憲剛ですから。

中村:個人的には見に来てくれた人に対して、見に来て良かったとか、やっぱり中村憲剛だなと思われるプレーを、毎試合したいとは思っています。もちろん負け試合もあれば、たいしたプレーができない時もありますけど。そういうのをひっくるめて、みんなの記憶に残りたいと、僕も思っていますね。フロンターレで12年目ですが、もっとやっていかなければって。
でも、いちおさんと今回話して、“俺本当に薄っぺらいな”って久々に思いましたよ(苦笑)。形式的には対談ですけど、僕の話なんかよりすごくいい話で、逆に僕の人生が豊かになった(笑)。父親としても、こういうのは面白いなと思います。世の中のお父さんお母さんたちに、こういう話を伝えられるというのは嬉しいです。

大塚:いやいや、返す言葉ないですよ。

中村:僕もないですから。「みいつけた!」を作った人はこう思っているんだ、深いなって思ってもらえたらいいですよね。僕が言うのもなんですが。ダメだなぁ、今日の俺(苦笑)。

――最後に中村憲剛さんのこの活動に対するメッセージを一言頂けますか。

大塚:一つは尊敬ですね。選手としてはきっと、サッカーや家族に一番時間を使いたいと思うのですが、本業をちゃんとクリアしたうえで、なおかつ自分の時間をこういうことに使っている。それを、すごく尊敬しています。
さっき僕が答えに迷ったように、この活動は答えがないものだと思うんです。こうしたら無くなるからこうしましょうっていう、単純な話じゃない。すごく根深くて、延々に続くものかもしれない。だから軽い言葉では言えないですが、この活動をちゃんとやろうとしていることを尊敬するし、できるだけ続けていってほしいと思います。僕も何か手助けできることがあれば、何でも協力したいと思っています。

中村:ありがとうございます。頑張りますので、応援よろしくお願い致します。

※近日中に総集編を公開予定です。お楽しみに!!

 

大塚いちお氏
■大塚いちお ichio otsuka
イラストレーター・アートディレクター
書籍や雑誌、広告、音楽関係などのイラストレーションを数多く手がけるほか、展覧会やワークショップの活動も積極的に行っている。
絵本に2012年映画監督の是枝裕和氏との共著「クーナ」(イーストプレス)、作品集に「illustration book, ICHIO Otsuka ’s MAGIC!」(誠文堂新光社)がある。NHK Eテレ「みいつけた!」番組全体のアートディレクション、「えいごであそぼ」のメインキャラクターと絵本コーナーも担当。「みいつけた!」は、2011年教育コンテンツ国際コンクール「日本賞」幼児部門最優秀賞を受賞。2014年、川崎フロンターレファミリーアートディレクター就任。
http://ichiootsuka.com

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