中村憲剛のイクメン対談 第4回 森沢明夫さん
VOL.2「コツコツ力を子どもに伝えたい」

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森沢:憲剛のところの下の子は何歳だっけ?

中村:年少で4歳。

森沢:以前、京都大学の名誉教授の大島先生が教えて下さったんだけど、子どもって3歳までに「潜在脳」が出来上がるんだって。潜在脳というのは、脳の能力をピラミッドに例えた場合の「床面積」にあたるものなんだけど、3歳までにその床面積を広げてあげると、将来、その上に積み上げられる脳の能力が増えるんだって。で、その潜在脳を広げるためには、自然と触れ合わせるのが一番。たとえば手の上に虫を乗せたり、枯れ葉をくしゃっと握り潰してみたり、風の感触や花の匂いを感じてみることとかが大事なんだって。

中村:それ、もうちょい早く教えてくれないかなあ(笑)。

森沢:その話を聞いたのは、うちの上の娘が生まれたばかりの時で、僕はアウトドアの本を書くくらい自然が好きだから、試しにたくさん自然に触れ合わせてみました。その結果、将来どうなるかはわかりませんけど(笑)

――自然の中で子どもと遊ぶのは大切ですよね。

中村:昨今、自然が少ないから、難しいですね。僕らの時は、少し行けば川だの森だのがあったんですが、減っちゃった気がします。でも、大事なことは間違いない。

――お忙しいとは思いますが、夏休みでお子さんがいる時に自然な場所に行く予定とかあるんですか?

森沢:和歌山の清流に行くはずだったんです。去年はその川で泳がせてエビを獲って、焼いて食べたりとかしていたんです。今年も宿まで取っていたのに、子どもの諸事情で行けなくなってしまいました。1番楽しみにしていたのは、父ちゃんなのに(笑)。

中村:僕は夏休みはいないからね。毎週末試合でオフは1日だけなので、どこか泊まりに行くわけにいかないし。それはサッカー選手が家族に申し訳ない部分の一つですね。

――自然と触れ合うことが将来の子供にとって大事ということですが、ご自身のお子さんには将来どんな風に育ってほしいですか?

森沢:人生を楽しむセンスのある人になってほしいかな。仕事の才能がどうこうっていうのは、どれだけ自分が頑張るかにもよるし、頑張らない人生ってつまらないと思うし。チャレンジして失敗して学んで、次は上手くいく。そうやって結果的に人生は楽しいなって思いながら生きる人になってほしいと思います。憲剛も、自分の大好きなサッカーをやっていて、こんな幸せなことない。って言ってたよね?

中村:言ってますね。苦しいこともひっくるめて楽しんでますからね。

森沢:それこそが、人生を楽しむ才能なんだよね。そういえば先日、ウチの息子がサッカーの練習を休んだら、その翌日、コーチから「昨日、休んだやつはグラウンド20周!」と言われたらしいんですよ。それを聞いた僕が、息子に「20周走らされているとき、何を思ってた?」って聞いたら、「スタミナつくから、ラッキーって思った」って。

中村:ほお!

森沢:この超ポジティブな思考は、見習わなきゃと思ったよ。喜々として全力で走ってたらしいから。

中村:なかなかの逸材ですね。

森沢:憲剛も小中高大と練習が厳しかったけど、嫌いじゃなかったって言ってたよね。きつくても、これをやればうまくなるって。それに通じるなと思ったよ。

中村:それはね、理不尽じゃない範疇だったので。もちろん、なんじゃこりゃみたいな練習もありましたけどね。結局それも今となったら楽しい思い出だし。そういうので仲間と笑ったりとか、そこで連帯感ができたりするし。辞めちゃう奴は、サッカー好きだけどもういいやって、どこかで嫌いになっちゃうけど、僕は嫌いになったことないんだよね。だからまだまだいけるなって思う。

森沢:去年、「中村史上最高」って言ってたよね。あれ本当にそう思ってるでしょ?

中村:技術的なところも、考え方とか試合の流れとかもろもろ、トータルでそう思いました。今も更新してる実感がありますからね。

――お子さんにもそうやって取り組んでほしいと

森沢:生きてく上で向上心は大事だし、ないとつまらないから。僕も小説を書く時は、より精度を高く、より良く書きたいと思っています。

中村:前の作品よりも?

森沢:前の作品よりもというより、いつも「いまの森沢のベスト」を出したいかな。80点の作品でいいやと思ったら、小説を書くことはただの苦痛でしかなくなるけど、120点出したいと思って、ひぃひぃ言いながら書いていると、「よし!」って思う瞬間があるんです。そういう充実感のようなものを、子どもにも味わってほしいです。

中村:何をやるにしてもそうだよね。

森沢:限界まで頑張って、結果やりきったと思ってほしい。その方が人生は楽しいから。

中村:向上心を持っていてほしいですね、子どもには。

森沢:『永遠のサッカー小僧 中村憲剛物語』に書いていることを、子どもによく言い聞かせています。中村憲剛は、“頑張らないのが苦手な子ども”だったって。そういう人が、最後は日本代表になるんだよって。あと、憲剛がどうして、あんなにスルーパスが上手くなったのか。それは、身体が小さくて、当たられると負けちゃうから、トラップを磨いて当たられる前にパスを出す練習をしたおかげだよって。つまり、弱点があったからこそ、自分の得意技を磨けたんだから、キミにも弱点があっていいんだよって教えてる。

中村:子育ての教本になれたんなら、言うことないなあ(笑)。

森沢:息子は、コツコツやるっていうことを中村憲剛から学びました。最初入ったクラブチームで、一番下手って言われていたんですけど、最後は1番上手くなってましたよ。

中村:いいね、今の! これ赤文字で(笑)

森沢:中村憲剛の生き方って、今の子どもたちのお手本になると思います。高校、大学、プロ、それぞれのチームに入ったとき、周囲に上手い選手がたくさんいて、最初は練習にもついていけなくて。でも、自分も上手くなりたいと思ってコツコツやっていたら、最後はキャプテンになって、とか。そういう話を憲剛に聞いていて、「コツコツ力」を子どもに伝えたいと感じました。

中村:出た!

森沢:だからあの本はサッカーを頑張りたいと言っている同じチームの子たちにけっこうプレゼントしました。憲剛みたいに、諦めずにコツコツ努力する人生の方が、きっと充実して楽しいですから。

※次回VOL.3も近日公開予定です。お楽しみに!!

 

森沢明夫
■森沢明夫 Akio Morisawa
作家。1969年、千葉県生まれ。早稲田大学人間科学部卒業。日韓でヒットした「虹の岬の喫茶店」は、吉永小百合主演映画「ふしぎな岬の物語」として2014年10月に公開予定。ベストセラー小説「あなたへ」と「津軽百年食堂」も映画で話題に。また「ライアの祈り」も映画化が決定し、2015年6月に全国公開予定。その他の作品は「癒し屋キリコの約束」「ミーコの宝箱」「ヒカルの卵」「大事なことほど小声でささやく」など多数。ノンフィクション作品「ラストサムライ 片目のチャンピオン武田幸三」では、第17回ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。
森沢明夫 official blog「あおぞら落書き帳」http://blogs.yahoo.co.jp/osakana920

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