中村憲剛のイクメン対談 第6回 坪井節子さん
VOL.3「夢は42都道府県にシェルターを作ること」

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――今まで色んなお話を聞かせて頂きましたが、改めて活動のことを聞かせてください。坪井さんがご自身で活動する前後で、周囲の虐待問題に全く関わっていない方々の意識の変化などは?

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坪井:まずは弁護士会でした。弁護士仲間が「それ弁護士の仕事なの?」と尋ねてきました。その意識を変えてもらい、仲間になってもらいました。そこが一番大きかったです。私たちはリーガル・ソーシャル・ワーカーという言葉を作り出して、弁護士は何も法律だけで戦う必要はないじゃん。困った子どもたちの相談を受ける一人の人間として、その子たちとともに生きるだけだ。

私たちはたまたま弁護士。それなら弁護士の力を活用して問題に取り組めばいいじゃないかと考えました。弁護士として、児童相談所やお医者さんの間で、子どもの代弁者として色々コーディネートしてあげればいいじゃないかと思ったんです。法律が盾になれば、子どもたちにとって強い味方になるじゃないか、と。この考えが弁護士会のなかで広まり、カリヨン子どもセンターに入るための相談窓口を、弁護士会で取り持っています。子どもの担当になる弁護士の費用は、弁護士会で会費を強制徴収して賄っています。

それから苦しんでいる子どもたちの実状を発信して、企業や団体、個人の方に寄付を募り、カリヨンの運営資金をサポートしてもらっています。カリヨンの運営資金は、間に弁護士が入っているから明瞭会計。資金の流れは全て見せ、私たちは一銭ももらいませんというスタンスでやっています。だから「お金の出しがいがある」と言って、カリヨンは色んな形でお金の援助を受けています。厚労省や自治体の理解獲得や事業認可を目指しつつ、私たちが自分でできることを、弁護士が、市民が、企業が、団体がそれぞれやっています。無力でいいけど、自分たちのできることをぜひやってください、そうして仲間になってください。私たちがまずやれることを実践して、そして国も関わってもらいましょう。こう働きかけました。

人と人がつながれば色んなことができます。夢を皆で共有すればいいんだと思いました。夢を共有することで、色んな立場の人が自分ができることは何だろうと動いてくれます。世の中、捨てたもんじゃない、ソーシャルアクションとはこういうものだと実感しました。

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中村:……かっこいいな(笑)。本当にかっこいいです。本気の行動は人を動かすと思います。僕もサッカー選手なんですけど、弁護士が法律だけでいくというのは、サッカー選手がボールを蹴るだけ、みたいなものじゃないですか。けれども川崎フロンターレの選手として、色んなところに出向いたりイベントに出ることは、坪井さんたちの活動と似ているのかなと思います。僕自身もサッカー選手はボールを蹴るだけじゃダメだと思っているので、Jリーガー一人一人がそういう風になったら大きいですね。

東日本大震災のときも、皆が一致団結して動いたら、すごいパワーになりました。色んな人たちが手をつないで協力し合う。スポーツの力はすごいなと思いました。僕が今こういう活動をしているのは、それも要因の一つなんですが、本気になって皆が動くとすごいですよね。坪井さんの話も、聞いていて「どっかで聞いた話だな……」と思っていたら、自分にも当てはまるなと思いました。

このChildOneの活動を僕が始めていなかったら、今日の坪井さんとの対談もなかったですし、これはすごい大事で、微力ながらお手伝いできればと思いました。こんな言い方失礼ですが、「こんな元気なおばちゃんを手伝ってあげたいな」と思いました(笑)

坪井:ぜひぜひ!私たちには、42都道府県の全てのシェルターを開くという夢があります。今すでに準備が始まっていて、来年の春には大阪と沖縄にシェルターが開設される予定です。兵庫や埼玉でも機運が高まっています。

中村:それこそ今、Jリーグも全国にカバーされています。そこをうまくつなげたらすごいですね。僕自身もこの活動をJリーグに広めて、各クラブでその地域で皆を守ろうよというのが究極なところです。少しずつですが、賛同してくれる選手もいると思います。いや、できると思うな。全国にシェルターを作って、サポートはJリーグみたいな。たぶん坪井さんが言ってくれればできると思います(笑)

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坪井:ぜひつないでください!最初は夢物語に過ぎないかもしれませんが、それでも皆がつながれば、きっと現実になります。

中村:なんかできると思います。いや、きっとできます。今日は坪井さんに出会えて本当に良かったです。対談前はどんな人かなと想像していましたが、イメージどおりでした!

 

 

 

坪井節子さん
■坪井節子 Setsuko Tsuboi
1978年3月、早稲田大学第一文学部哲学科卒業。1980年4月、東京弁護士会にて弁護士登録。1984年4月、坪井法律事務所開設。1987年11月から、東京弁護士会子どもの人権救済センター相談員。東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する委員会委員など。2004年6月から、NPO法人カリヨン子どもセンター、2008年3月から、社会福祉法人カリヨン子どもセンター理事長。著書 子どもたちに寄り添う(いのちのことば社)、子どもは大人のパートナー(明石書店)、弁護士お母さんの子育て新発見(草土文化)、少年法・少年犯罪をどう見たらいいのか(明石書店・共著)、子どもの人権双書⑦乳幼児期の子どもたち、⑨子どもたちと性(明石書店)、人権を考える本②子ども・障害者と人権(岩崎書店)、わたしの人権 みんなの人権・第2巻 いじめ、暴力、虐待から自分を守る(ポプラ社)、お芝居から生まれた子どもシェルター(明石書店・編集代表)