中村憲剛のイクメン対談 第7回 渡辺明竜王
VOL.2 「共通のツールを持つことが大切」

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――お二人は家の中で家事はされますか?

渡辺:僕は少しですね…って妻は言います。妻は取材とかで聞かれると「ほとんどやっていない」って。僕はやっているつもりなんですけど、洗濯などを手伝おうとすると、やり直しになるからやらなくていいって言われますね。できるのは食器洗いくらいです。

中村:それは“あるある”ですね。たぶん、私に比べたらやっていないってことなんだと思う。でもお父さんはみんなそうだよね。それを本人に強めに言うと怒られてしまう。だから男は黙っているしかない。(笑)。

――子育ての役割は家庭の中で決まっているのですか?

渡辺:改まって妻と話したことはないですが、ある程度分担はされています。息子がやっているサッカーの話は自分で、習い事や勉強の方は妻が見ているという感じですね。何かあったら、それはそっちの担当だろみたいな感じで押し付けるときもあります(笑)。

――お子さんが来年から中学生ということですが、今の息子さんを見て思うことや感じることはありますか?

渡辺:もう手が離れてしまう年齢なので、ここまで来るのが早かったなと思いますね。もうちょっとしっかり接しておけばよかったなと思います。

――どんな事をしておけばよかったですか?

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渡辺:もう少し、褒めて伸ばすようなことをしてあげたかったですね。僕は今32歳ですが、20代の時は自分に余裕がなくて。子育てを始めたのが早かったので、子どもを一人前に育てられる能力が身についていませんでした。子どもには悪いことをしたなと反省しています。でも30代になって、少し余裕ができて気持ちの持ちようも変わってきました。今の自分で一から子育てを始めたら、また違った結果になると思います。

中村:僕は3月に3人目が産まれたんですが、1人目ができた20代の時と今の30代の時ではぜんぜん違いますよね。

渡辺:1人目はいつ産まれたんですか?

中村:今小2なので、2008年です。

渡辺:20代後半ですよね?

中村:そうです。27歳の時。もし自分が20歳の時に子どもがいたら、子どもが子どもを育てるみたいな感じになりそう(笑)。

渡辺:そうなんですよ。妻にもそう言われていました(笑)。

中村:でも、お父さんってだいたい子ども扱いされません?

渡辺:それはありますね。世のお父さんを見ていても年齢を重ねている方のほうがいい子育てをしているなと感じます。よく「お父さん若くていいね」と言われるんですけど、実際そんなことないなって思いましたね。

――仕事と子育ての時間のバランスは、どうしていますか?

渡辺:僕は家にいる時間がとにかく長いので、子どもを見ている時間が長いんですよ。

中村:僕はタイムスケジュールは決めていないです。棋士だと家にいる時間が長いから決めていないということですか?

渡辺:そうですね。

中村:棋士は連続で試合があって、試合がないときはポーンって長期間日程が空くんですよね?

渡辺:そうです。3泊4日で試合に行くこともあれば、2週間試合がないこともあります。そうなると家にいる時間が多くなって、子どもの動きが全部見られるので、気になったことを注意ばっかりしてしまいます。外食に行くと、子どもが食べていてこのお茶こぼしそうだなと思うと、先によけてしまいます。

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中村:あ、先にね。

渡辺:先にやってしまうのはダメだなと思いますけど、こぼされたら拭くのは自分なので、先によけます。でも子どもはこぼさないと分からないですよね。

中村:その判断は難しいところですよね。分かるなー。

渡辺:何回かやったら子どもも学習すると思いますけど、でも結局自分がやってしまうから、どんどん子どもの成長を妨げてしまう。だから妻にもよく怒られます。

中村:口頭では言わないんですか?

渡辺:口頭でも言いますが、言っている間に自分の手が伸びてしまいますね。子どもは自立しなければならないので、そういう意味で育てるといった意識が足りなかったなと思います。今は気がついているだけいいのかもしれないですが、そこはすごく難しいと思いますね。

中村:さじ加減は難しいですよね。それは本当に分かります。

渡辺:でも面倒なことは回避してしまいますよね。

中村:それも分かる。

渡辺:正解はないのかもしれないですね。

中村:それは子どもが育った時に分かることかもしれないですね。

――子育てを通して学んだことは、と聞かれたらなどう答えますか?

渡辺:我慢(笑)。

中村:絶対奥さんに怒られる(笑)。

渡辺:子育て自体はうまくできなかったですけど、今は子どもと楽しくやっているので。

中村:それはそれで、お子さんが楽しくやっていればいいですよね。

渡辺:子どもと遊び始めるのは遅かったですけど、サッカーの繋がりが大きくて、そこから話すようになりましたし、よく一緒に出かけるようにもなりました。

中村:お子さんと試合を見に行ったりは?

渡辺:しますね。後は家で一緒にテレビで見ますし、雑誌も見たり。

中村:うちと一緒ですね!

――うまく子どもと接することができないお父さんがいる中で、そういうことをされているのはいいですね。

渡辺:何か共通のツールがあるといいですよね。僕の場合は将棋という繋がりが父親とあったので、毎週末一緒に出かけていました。だから父への反抗期とかもありませんでしたね。

中村:そうですよね。しっかりコミュニケーションとれていますもんね。

渡辺:何か没頭できる共通の趣味があるとうまく子育てができると思います。

 

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■渡辺明 Akira Watanabe
棋士。1984年、東京都生まれ。2000年4月にプロ入りを果たすと、2004年の第17期竜王戦で初タイトル獲得。翌年には史上最年少で九段に昇段し、2008年に永世竜王資格者となる。2013年には第62期王将、第38期棋王を獲得し、史上8人目の三冠王となった。現在は竜王、棋王の二冠。踏み込みの良い棋風とともに、明確な解析能力に定評がある。

また、自ら立ち上げた将棋連盟フットサル部の部長もつとめており、月に一度のペースで関東の棋士や関係者でボールを蹴っている。